この記事では、毎週、宝塚歌劇専門チャンネル「タカラヅカ・スカイ・ステージ」のおススメ舞台映像を紹介しています。

宝塚歌劇ファンの方・最近宝塚歌劇のことが好きになった、気になるという方向け。

今週【2020年6月29日(月)~7月5日(日)】の注目番組は!

紅ゆずるさん主演『霧深きエルベのほとり』です!

一見チャラ男に見えて本当は繊細で純粋な心を持つ船乗りカール・シュナーダーを紅ゆずるさんが見事に演じています。

この機会に、是非タカラヅカ・スカイ・ステージでご覧ください。

スカステについて詳しくお知りになりたい方は、上記にてどこよりも詳しく視聴方法・視聴料などについて丁寧に解説しています。是非参考にしてください。

簡単に自己紹介しますm(__)m。

・宝塚ファン歴30年のアラフィフおやじです(^^;
・最も青春した生徒さんは安寿ミラさん♪
・舞台鑑賞数が最も多いのは圧倒的歌唱力に魅せられた涼風真世さん♪
・今は礼真琴さん推し。
・学生時代には演出助手の試験を本気で受けたくらい宝塚が好きな人間です(^^;
宝塚歌劇団 演出助手 不採用までの記録

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霧深きエルベのほとり(’19年星組・東京・千秋楽)

【放送日時】2020年6月29日(月)13:00~15:00

スカステ番組紹介

作品のあらすじは、スカステの番組詳細でどうぞ。

『霧深きエルベのほとり』は日本を代表する劇作家であり、演劇界に多大な功績を遺した菊田一夫氏が1963年に宝塚歌劇に書き下ろした作品。エルベ河に隣接する港町を舞台に、ビア祭りの日に出逢った船乗りと令嬢の切ない恋を描く。潤色・演出は上田久美子。’19年星組・東京宝塚劇場・千秋楽。紅ゆずる、綺咲愛里、礼真琴 他。年に一度のビア祭りの初日を迎えて浮き立つドイツ北部の港町ハンブルグに、貨物船フランクフルト号が帰港する。船を降りた水夫のカール(紅)は、仲間たちと訪れた酒場でマルギット(綺咲)と出会う。カールは家出をしてきたというマルギットと店を抜け出してビア祭りを楽しむ。カールの粗野な振る舞いの奥に見える純粋さに惹かれて、マルギットは恋に落ちる。一方、古都リューネブルクでは、上流階級の青年フロリアン(礼)がマルギットを探していた。マルギットは実は名門シュラック家の長女で、フロリアンはその許嫁だった。エルベ河の畔で一夜を共にしたカールとマルギット。マルギットの持つ本当の優しさを知ったカールは、真剣に彼女を愛するようになり、真面目に彼女に求婚する・・・。

タカラヅカ・スカイ・ステージ

主なキャスト

『霧深きエルベのほとり』の主なキャストです。

カール・シュナイダー

紅ゆずる
マルギット・シュラック

綺咲 愛里
フロリアン・ザイデル

礼 真琴
トビアス

七海ひろき
マルチン

瀬央 ゆりあ
アンゼリカ・ロンバルト(カールの昔の恋人)

音波 みのり
シュザンヌ・シュラック

有沙 瞳
ベティ・シュナイダー

水乃 ゆり
ヨゼフ・シュラック

一樹 千尋
ヴェロニカ(酒場の女)

英真 なおき
ザビーネ・シュラック

万里 柚美
ホルガー(宿の主人)

美稀 千種
マインラート

如月 蓮
カウフマン警部

天寿 光希
ロンバルト

輝咲 玲央
エリカ

華鳥 礼良
リコ

天華 えま
アドリアン・エルメンライヒ

極美 慎

その他 宝塚歌劇団星組(宝塚歌劇公式サイト参照

『霧深きエルベのほとり』ちょい感想

『霧深きエルベのほとり』は岸田一夫氏の脚本。

初演は、1963年月組。主役カールは内重のぼるさん。

その後、1967年月組、1973年月組、1983年花組で再演。

1983年の花組公演は柴田侑宏先生の潤色・演出。

私は、この花組公演のTV放送版を見たことがありますが、フロリアンはペイさん(高汐巴さん)だったような…。宝塚大劇場ではフロリアンは平みちさんだったので、東京宝塚劇場のNHK放送版を見たのかな?

細かい部分はもう記憶が飛んでしまっていたので😢、今回大好きな星組での再演は嬉しかったです。

では、さくっと感想を。

カール、フロリアン、トビアス あなたなら誰を選びますか?

『霧深きエルベのほとり』の主要男性キャスト3名。

主役カール(紅ゆずる)、マルギットの許嫁フロリアン(礼真琴)、カールの妹と結婚する水夫のリーダー的存在トビアス(七海ひろき)。

あなたなら誰を選びますか?

推しのスターさんで選んじゃだめですよ!

カールは一見チャラ男だが、繊細で純粋な心の持ち主

マルギットとの恋の前に、アンゼリカと真剣に恋に落ちていたことがマルギットとの会話とその後の展開で分かります。

アンゼリカが自分のもとを去った理由も知っており、彼女のことを理解し、彼女の幸せを今でも願っている。

「アンゼリカ、気にするなよ。お前が幸せなら、それでいいんだ。だからよぉ、旦那にかわいがってもらって幸せに暮らせよぉ。」

マルギットと別れたのも、フロリアンが指摘していたように彼女が自分を恥じていることを感じ、今後一緒になったとしても自分のような男との生活に彼女が耐えられなくなる、つまりは、彼女が幸せになれないと考えたわけですよね。

何度も「俺と一緒に出ていくんだろうな」とマルギットの自分への思いを確かめ、その思いを胸にヨゼフの元へ…。

不器用すぎる一芝居を打って屋敷を去っていく姿がなんともせつない。

本当はマルギリットのことが好きで好きで仕方がないのに…。

そんなカールを紅ゆずるさんは得意の軽妙な台詞回しでチャラ男を演じつつも、マルギットへの愛は純粋で、誠実で、その思いが舞台上から溢れ出てくるような好演。

正直言うと、悪ふざけが度を過ぎて品がなくなってしまうのでは?と心配していたのですが、杞憂に終わりました。

フロリアンがシュザンヌに対して言った言葉、

「今も愛している。愛しているから僕は、マルギットの心を分かってやりたいんだ。」

これを頭で考えるのではなく、まさに地で行く男性なんですよね、カールって。

アンゼリカに対しても、マルギットに対しても。

紅カールからは、それが見ている側にも自然に伝わってくる。

方々から耳に入ってくるところによると、紅さんって普段からカールそのもののようなところがある方だそうで。

順みつきさん以降のトップでこの役ができる人って誰かいただろうかと想像してみたのですが、紅さん以外に浮かびませんでした。ほんの少し真矢みきさんが浮かびましたがやっぱりちょっと違う。

カールは菊田一夫氏が紅さんのために書き下ろしたかのように感じました。それくらい、紅さんは完璧でした!

フロリアンは聡明で、誰に対しても思いやりのある青年

マルギリットの許嫁であるフロリアン。

許嫁のマルギットが家出したことに怒りもしない。

「今も愛している。愛しているから僕は、マルギットの心を分かってやりたいんだ。」

マルギットの父ヨゼフに対してもきっぱり、

「人間の愛情というものは、身分の高さや職業の低さには関係のないものです。」

これらのセリフに尽きますね。

そして、自分と同じように、自分のことを想うシュザンヌのことも下心ゼロで思いやれる好青年。

自分の弱さをも分かっている完璧な好青年。

こんな人いますかね?いそうでいないから、演じるのも難しいでしょ。

礼真琴さんは、この難しいフロリアンを一点の曇りもなく演じていました。

ソロの歌唱シーンも情感たっぷりに歌い上げ完璧!ますます好きになっちゃいました(^^;

トビアスは男気あるとにかくかっこいい男

船乗り仲間の一人で仲間からの人望もある、とにかくかっこいい男。

トビアスもカールほどではないが、不器用で実直な男。

カールの妹ベティと一緒になるため船を降り、カールとベティ兄妹の故郷で堅気になる。

本当はカールがこうなりたかったという姿を映し出している存在。

出番は多くないのにしっかりインパクトを与えるあたりはさすが七海ひかるさん。

で、この3人のうちだれを選びますか?

マルギット、シュザンヌ、ペティ、アンゼリカ、私なら誰を選ぶか

結論から言うとアンゼリカですね。

マルギットもシュザンヌも由緒ある大家の令嬢。

そもそもマルギットは、父親が実の母を捨てたと思い込んでおり、その父親への反発心から家を出たとはいえ根っからのお嬢様。

なのでカールと出会ってからも、レストランでの振る舞い、結婚報告のパーティーなどで知らずカールの繊細な心を傷つけてしまう。

何も知らないお嬢様だからこそ無垢にカールに恋する様はかわいらしいのですが、男の私からするとやはり少し引いてしまいます。ぶっちゃけちょっとイラっとしてくる。

綺咲愛里さんはその少し引かせる微妙なお芝居がお見事でした。

一方、シュザンヌは女性版フロリアン。ただ、フロリアンほど大人ではなく、フロリアンに甘えるあざとさも垣間見えました。悪い子ではないので普通に許せるレベルですが、やはりお嬢様であることには違いない。

とはいえ、シュザンヌの有沙瞳さんはただただかわいい(^^;。

カールつながりのペティとアンゼリカ

カールの妹・ペティは貧しい田舎娘。普通に穏やかに暮らせればそれでよいという女子。

ペティは水乃ゆりさん。新人公演でマルギットを演じており期待されているのでしょう。マルギットは素でできそうな雰囲気な娘役さんですね。

そして、カールの昔の恋人アンゼリカ・音波みのりさん。

アンゼリカもカールの理解者の一人。家庭の事情でカールと別れざるをえなくなってしまったものの、今でもカールを思いやっている。もともとが上流階級ではないがゆえに、レストランでマリギットに声もかけられません。でも、夫のロンバルトは最後にしっかりお別れをさせてやるという懐の大きい紳士。アンゼリカは幸せでしょうね。音波みのりさんが美しくてうっとりしちゃいます。

で、私が選ぶとしたらアンゼリカ。

やはり、マルギットとシュザンヌは住む世界が違う女性だと思い引いてしまいます。ペティはいい子ですが、面白くないかも。

アンゼリカが一番お互いを理解し合えて、自然体でいられる相手かなと思えるので。

一樹千尋&英真なおきコンビは星組ファンには嬉しい

今や専科のお二人ですから、他の組での共演もありますが、やはり星組に戻って出演してくれると嬉しいですし、しっくりきます。

一樹千尋さんはマルギットの父親ヨゼフ。娘の母親のことを娘に黙っていたのは娘を思いやるためか、家の体面のためか。

いずれにせよ、その圧倒的な存在感。重厚で厳格な家長をその場に立つだけで魅せる。そして、よどみなく発せられる台詞からも誰も抗えない響きが感じられる。ロミジュリのキャピュレット卿など、この手の役で一樹さんの代わりができる人は今の宝塚にはいないですよね。すごい。

英真なおきさんの酒場女はなぜか微妙に笑えるのですが(失礼(^^;)、英真さんだからこそカールが全てをゆだねられるという包容力を感じさせますね。

この二人のように星組を支え、これからも支え続けてくれるであろう美稀千種さんは宿の主人。カールとマルギットをかばってくれるんですが、やはり二人は別れることに…。

紅カールの『霧深きエルベのほとり』は泣けたか

はい、泣けましたとも。

本当は好きでたまらないのに、相手のことを思って身を引くって頭で考える以上に辛いことですよ。

えっ、そんな経験が?…ありませんけどね(^^;

結末も知っているのに、じわじわときました。

でも、83年版では、ラストシーンでマルギット若葉ひろみさんの「次はいつ帰ってくるの?」みたいなセリフがあったと思うんですが、今回はなかったですね。

それによって、カールの帰る場所がなくなってしまったかのように感じられより切なくなりました。

上田久美子演出

大階段を使ったプロローグや、一枚の絵画のようなシルエットの宿屋のベンチ場面、クラシックな立ち位置に姿勢。細かなところまで抜かりない演出はさすが。

賛否ありそうなのはラストシーンと、他の水夫の場面が少なく若手メンバーの扱いが弱いところかな。

マルギットは、カールと一緒になっても幸せになれなかったでしょう

根っからのお嬢様ですから…。現代の自立した女性とは正反対の、フロリアンのような包容力のある男性の元でしか幸せになれないような。

とはいえ、カールによってではなく、フロリアンによって一人の人として成長したはず。カールへの思いを胸に抱きながらも、フロリアンの思いを受け止められるほどに。

カールはまた恋をすることができるだろうか…、二度あることは…ですからね。

スカステで見る紅ゆずるカール『霧深きエルベのほとり』:まとめ

宝塚歌劇105周年 Once upon a time in Takarazuka 公演として上演された名作『霧深きエルベのほとり』

紅さんの個性が一見チャラ男に見えながらも純粋で優しいカールとシンクロし、菊田一夫さんが紅さんに書き下ろしたかのような素晴らしい作品として蘇っていました。

紅さんを始め、綺咲さん、礼さん、七海さん、専科の一樹さん、英真さんたち。皆の役がピタリとはまり最後は期待通り泣かせてくれました。

こんな作品が見たかったと思わせてくれた星組メンバーと上田久美子先生に感謝です。