5月21日付で、兵庫県教育員会ホームページに、「令和2年度兵庫県公立高等学校入学者選抜学実施結果」および詳細が公開されました。

👉兵庫県教育委員会

 

主な内容は次の通り。

 

・入試の概況(倍率・充足率など)
・学力検査の平均点
・各教科小問別得点率

さっと目を通して気になった点が2つ。

 

充足率が低下している(定員割れが増えている)
・国語と社会の平均点が前年と比べ約10点低くなった

この記事では、
公立校の充足率低下の一因として私立高校授業料無償化があるのではないかと考え解説をしていきます。

 

□この記事で分かること
・私立高校授業料無償化で、私立高校に通う場合実際いくら費用がかかるのか
・私立高校授業料無償化による入試動向の変化
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兵庫県公立高校の充足率の低下

兵庫県教育委員会 高校教育課より

 

もともと定員割れの多い県北の第五学区はやむなしとして、第2学区以外の全ての学区で充足率が低下している(定員割れが増えている)という結果になっています。

 

充足率100%以下の主な高校
・伊川谷北高校 186/216 86.1%
・西宮甲山高校 171/184 92.9%
・宝塚西高校  228/240 95.0%
・明石北高校  272/280 97.1%
・明石城西高校 271/280 96.8%
・高砂南高校  167/200 83.5%
・加古川北高校 135/147 91.8% など

明石北高校は、明石市ではトップ校(第3学区全体では上位3番目)であるにもかかわらず定員割れとなりました。

 

考えられる要因としては、

 

・新型コロナウイルスの拡大期で、入試に対する不安があった。
・2020年度からの私立高校無償化で私立高校進学へ流れた。

一番の理由は後者だと思われます。

 

コロナに関しては、2月後半から学校が休みになってしまたことで「私立に合格しているので無理して公立は受験せずに私立でいい」と考えた方がいたかと思います。
実際、私が勤めていた塾でもそういう相談を受けました。

私立高校無償化とは?

私立高校無償化

 

私立高校の無償化は、正確には「私立高等学校等生徒授業料軽減補助制度」といいます。

 

2020年度から国が私立高校の授業料実質無償化の制度を導入しています。

 

実は、すでに兵庫県の私立高校でも授業料の補助は行われていました。
したがって、国の無償化により補助受給額が大きく引き上げられたというのが実情ではあります。

 

また、私立高校により学費や別途施設費・寄附金などが高額な学校もあるので完全無償化というわけではありませんが、経済的負担は大きく軽減されることになり、子供の進路の選択肢が広がったことは間違いないでしょう。

兵庫県独自の授業料補助対象拡充措置

兵庫県は、国の就学支援金に補助金を上乗せする措置をとっています。

兵庫県は2020年度、国が導入する私立高校の授業料実質無償化に合わせ、授業料補助の対象を独自に広げる。 国が年収590万円未満の世帯を対象にするため、県は年収590万円以上910万円未満の世帯に最大10万円を補助。 無償化対象世帯にも、県内の平均授業料に合わせて国の補助額に1万2千円を上乗せする。
引用元: 神戸新聞NEXT

これにより、令和2年度の補助受給単価(年額)は次のようになっています。

 

私立高等学校等生徒授業料軽減補助制度
兵庫県:私立高等学校等生徒授業料軽減補助制度より

 

注意点は、基準となる年収が世帯単位というところです。

 

世帯主の年収ではありませんので、共働き家庭では夫婦の年収合算となります。

 

申請方法等、制度の詳しい内容は下記を参照ください。
👉兵庫県の「私立高等学校等生徒授業料軽減補助制度」について

 

また、授業料以外にかかる費用(教材費や修学旅行積立金等)の補助もありますので、詳しくは下記を参照ください。
👉高校生等奨学金給付制度 をご覧ください。

私立高校初年度費用と補助受給額との差額はどれくらいか

目安として、兵庫県内下記4校の入学初年度費用と年収270~590万円未満程度世帯で補助される408,000円との差額を見てみましょう。

 


※令和2年度入試募集要項等による。
※授業料はコースにより異なる学校があるため、標準コースで掲載しています。
※特別な追加費用は含みません。

 

授業料だけで見ると龍谷高校以外は、補助受給額との差額を支払わなければなりません。

 

とはいえ、初年度の合計だけを見ると各校あまり大きな差はありません。

 

いずれの学校も、入学金や施設費などが大きく初年度は90万円前後以上が必要といえます。

 

さすがに金額が大きくなるため、負担を軽減するために次のものを利用するとよいです。

 

高校生等奨学金給付制度
・各校の奨学金
・入試結果による入学金・施設費などの減免

入試結果による入学金等の減免は、多くの学校で行っています。
上位10%以内なら入学金全額免除などの対応をしているところもありますので、各学校に問い合わせてみてください。

2年目以降、私立高校に通う場合実質いくらかかるの?

文部科学省『平成30年度子供の学習費調査』によると、

公立・私立高等学校(全日制)における学校教育費の平均は次の通りとなっています。

 

公立高校:28万487円
私立高校:71万9051円

兵庫県の私立高校の場合、2年目以降は入学金や初年度に必要な施設費などを除いた年間約80万円前後から補助受給額40万8000円をを差し引いた額、

 

つまり、年間約40万円前後が必要となると思ってよいでしょう。

 

補助受給額が増えるとはいえ、統計通り私立高校の方が公立高校の約2倍以上の費用がかかります。

来年度以降の高校入試動向

 

少子化による受験生の減少で、公立高校の定員は今後も削減される傾向は続くでしょう。

 

一方、私立高校は公立高校と比べると費用がかかるものの、

 

・授業料の実質無償化
・各校の奨学金などの対応

 

などにより、
近くの公立高校に通う感覚で私立高校への志願者がさらに増加する可能性は大いにあります。

 

特に、新型コロナウイルスの対応で、須磨学園高校の素早いオンライン授業などが高く評価されているように、設備・施設面、柔軟な対応など、公立高校より優れた点がたくさんあります。

 

学校見学や説明会開催の時期は秋以降が中心となっているようですが、公立高校と同様にしっかり見学しておかれる方がよいかと思います。

私立高校授業料無償化が公立高校入試に与える影響:まとめ

 

令和2年度兵庫県公立高校入試の結果概況を見て、公立高校の充足率低下が気になりました。

 

その理由の一つとして、私立高校の授業料無償化が影響しているのではないかと。

 

公立高校に比べると学費は高いものの、授業料無償化により進路先の選択肢が増えたことは事実。

 

特待生制度や奨学金を利用すれば、実質的な支払いは修学旅行の積立金と電車の定期代だけくらいで済む場合もあります。

 

今後さらに、私立高校も含めた受験指導・進路指導が進むことも十分に考えられるのではないでしょうか。

 

したがって、秋以降に本格化する私立高校の学校説明会や見学会にもしっかり参加しておくことが必要ではないかなと思います。

 

今回は、ここまでです。